砂のオンナ

もうロンドンよ、いま。

わたしとコーヒー

曇り空を眺めながら
コーヒー飲みたいと思い
「美味しいよ」と頂いたコーヒー豆の袋を開けた

淹れ立てのコーヒーの香りが
部屋に充満していく瞬間が好き

幼少の頃
母はコーヒーが好きでよく飲んでいた
ほっと一息付きながら
美味しそうにコーヒーを飲む母の表情をみて
わたしも飲んでみたくなった

飲ませてとせがんだものの
とても飲み物としてこの世に生を受けたものとは
思えないくらいのその味に
大人のすごさが身に染みたものだ

成人を迎え、30歳を超えたときにでも
なんちゃらフラペチーノというモドキにときめいたり
カプチーノ泡フワフワぁとかわいこぶったりしていても
ブラックコーヒーだけは
ゆるふわのわたしは頑なに受け入れることができなかった

40歳を迎えたころからだろうか
まるで『この店の食材はすべて貪ってやる!』かのように
飲み食いした食事会のラストには
ブラックコーヒーが飲みたくなった

気付いたら自分の部屋でも
コーヒー豆を挽いて飲むになった

なんとなく今日みたいな天気の日には
コーヒーが飲みたくなっていた

この世のものとは思えず
敬遠していたはずのコーヒーを
いつのまにか わたしは
好きになっていた


わたしとコーヒー

 

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蝉時雨

書いては消し 書いては消し
目の前にあるディスプレイにはなにも表示されていないのに
あなたへの想いは募る一方で
 
それでも乱暴に書き殴らないと
気が済まない衝動に駆られる
 
どうしていなくなってしまったの
どうしてもう逢えないの
どうやったら逢えるの
どうやったらまたあなたの顔をまた見られるの
 
どうして?どうやったら?
の繰り返しで
気付けばあなたが生まれた夏が終わろうとしている
 
まるでなんどもそのシーンを演じたかのように
最期にあなたをみかけた日のことは
いまでも鮮明に脳内のスクリーンに投射される
自分でフィルムなんてセットしていないのに
したくないのに
時々カタカタいいながら投射される
 
あなたが会場から出て行くのを外で待っていた
暦の上ではもう秋だというのに
ものすごい暑かった
不本意なのにわたしは真っ黒の洋服を身に纏わずにおえなくて
体の芯から熱かった
 
帰り際
「せっかくこうしてみんなでまた顔を合わせられたのだから
定期的に逢おうよ。後悔とかしたくないし。」
と誰かが言った
「そうだね、そうだよね。」
とみんなが口を揃えて言った
 
それはいまだに叶っていないことだけれど
その子がいったそのコトバも
同調した周りのコトバも
きっと綺麗事とか嘘とかじゃなかったんだろうなっていうのは
きちんと分かってる
 
わたしのなかのブレーカーを落としたきっかけの一つが
あなただというのはとても皮肉なことだけれど
強い哀しみの代替が なんらかの教授になったことは
答えのない漠然とした不安がつづいてたことより
何倍もいいかなっていまでは消化してる
 
感謝こそしていないけれど
 
手を伸ばせば いつでもあなたに届いていたのに
手を伸ばしても もう触れられないいまの現実は
ずっと大きな岩を両方の手のひらだけで抱えている気分
 
でもあなたが去った夏さえ過ぎてくれれば
すぐにまた想い出に押し込められるよね

トム・クルーズみたいなバーテンダーがいたら ワタシいくらつぎ込んじゃうんだろう

素敵なバーに連れて行ってもらった
 
店ではソウルミュージックが流れ
コンセプトをしっかりあらゆるところに巡らせていて
絶妙なバランスをとっている素敵なバー
 
なにより暗い
 
見たくないものを見なくてすむのは良い
私がカワイイからと席に着いた途端
色目を使ってくる殿方のけもののようなカオを
見なくてすむのは良い
 
ただ老眼の私にとっては死活問題だったけど
 
わたしたいものがあるとプレゼントを頂戴したのだが
それがなんなのかフォルムしかわからず
指の感覚を頼りに
「これは、、、やわらかいわ。キャップがあるわね、ハンドクリームかしら。」
当てっこしたくらい暗い
 
奇跡の人か、わたしは
 
それでも牙を剥いた狼たちの(以下省略)と
たまらない雰囲気には代えがたい
 
なによりバーテンダーさんがつくってくれるカクテルが
どれもどれも美味しくて
 
わたしが好んで飲むのは
ジンライムかウィスキーロックばかり
たまには違うものを頼んでみた
 
嘘をついた
 
「なんとなく気分を変えたくて」っていう
わたしはそのつもりはなかったんだけど
わたしのなかのバイブスが
わたし自身を突き動かしたとかって
なんかカッコイイかなっておもった
 
だから嘘をついた
 
本当はバーに連れて行ってもらうと聞いてから
絶対頼もうとおもっていたものをオーダーした
 
ドライ・マティーニ
 
これだけ長く生きてきたのに
なぜか一度も口にしたことがなかったカクテル
でもその存在は絶対王者的にわたしの脳裏に刻み込まれてるカクテル
 
だけれどそもそもマティーニって何ベースなのかもわからない
ただただオリーブをいやらしくスティックを
つかってなぶりたいだけの
邪なオーダーとはウラハラに
わたしはバーテンダーさんがつくるドライマティーニを愛してしまった
 
いまでも目をつぶるだけで
味を脳内で再現できるくらい
 
あぁ、あの味求めて
また今夜も足を向けてしまいそう
 
イイオンナには
おいしいドライ・マティーニ
 

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Play A Love Song

自分がここにいてもいいのかしら?とひどく疑り深くなる
どうしようなく誰かの気持ちを確かめたくなる
あなたはわたしにとってオンリーワンなんだと強く信じさせてほしくなる
 
でもこれではダメだ
このままだとどうしようもない
なんとかしなきゃ
もっと自分で自分をスキになってあげなくちゃ
 
ただ
 
己のことを、己で認めてあげられるのには
きっとものすごい時間がかかること
 
そのことに気付くまでに
長い時間がかかった
 
足掻いて 足掻いて 傷つけて 足掻いて
その繰り返しのなかで
自己が構築されることもなく
 
どうやってここまで辿り着いたのか
自分でも分からなくらい足掻いたのだろうか
それとも諦めたのだろうか
 
気付いたら
一周回ってスタートに戻ってた
でもすこしだけ
前よりすこしだけ高いスタート地点な気がする
それより、もしかしてここはただの中間地点で
スタートとかじゃないんじゃないかしら
 
人生ってきっとそんなかんじ
どこからがスタートとかでもないし
ここまでがゴールって感じでもない
かといって長い冬は続かないし
明けない夜もない
 
ただそこに「わたし」がいるだけ
ただそれだけ
それがわたしの人生  
ただそれだけ
 

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愛をこめて花束を

「ねぇ、きょうってなんの日か知ってる?」
メッセージを寄越してこない友人たちに
朝一であらゆるメッセージツールでばら撒く

「あ、そうだったね!お誕生日おめでとう!」
のような渋々感が強めの返信メッセージに対し
「あなたは、2018年度 n番目のバースデーメッセージ送信者です」と返していく恒例行事
そう、その日こそ、わたしのバースデー

そしてわたしの誕生日をだしに
「ソロソロ集まりますか」と
桜を愛でることもなく酒と料理を持ち寄り
おうちでダラダラするだけの宅飲みという名の
わたしのためのバースデーパーティー

たとえ最後にケーキの上にイヤガラセのようにロウソクがのったり
最近ではバースデーケーキどころかロウソクのせるところないけど
なんならピース売りのあなたたちが食べたいだけのケーキじゃね?って
ことも多かったりするけれど それでもわたしが『祀られる』素敵な素敵なバースデーパーティー

なのにうっかり誕生日が1週間違いのユウスケさんを 連れて行ったものだから
「そういえばユウスケくん誕生日いつなの?え?もうすぐじゃん!」
と気を使ってくれた主催者

今年から
「マダムとユウスケくん、おめでとう」
と、いい歳をこいたおっさんゲイ二人が祀られた
毎年崇められるのはわたしだけだったはずなのに

そのユウスケさんに今年は任天堂Switchを贈った

「なんだろなんだろ」と言ってプレゼント袋をあけた
「え!?バカじゃないの?え?え?うそでしょ、バカじゃないの?」
と、たぶんいままであげたどんなプレゼントよりも昂ぶってた

まえにYoutubeでみた
「クリスマスプレゼントにSwitchをもらい狂喜乱舞する外国のこどもたち」動画とおなじくらい昂ぶってた

「引っ越しとかで便利だから捨てないで」
ゲームの箱はわたしの家においたままだけど

それより、あれからドハマリしたみたいで
気付いたらユスケさんのスプラトゥーン2のランクが
わたしよりも高くなってた

このゲームはわたしがリードするはずだったのに
簡単に抜かされるわたし

そんな毎年恒例
わたしのバースデーパーティーとプレゼント交換

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また君に恋してる

「ラーメンじゃないよ、スープだよ。これは一汁三菜の汁だよ。」
と言って味噌汁代わりにカップラーメンを喰らった

さっき済ませた私の昼食でのワンシーン
太っちょさんってね 毎日背徳感との闘いなの

それにしてもここ最近世の中が暑い
わたしが恋した 一桁の最高気温さんたちは何処に行ったの
これが温暖化?温暖化の影響なの?

なんて文句ばっかりいっても仕方ないから
こちらが二桁になりやがった最高気温さんに合わせるしかない
みんなによく誤解されるのだけれど
わたしは意外と「郷に入れば郷に従え」ができる子

だから履いたわ
今年最初のショートパンツを
職場に行ったわ
今年最初のショートパンツで

ホームを歩くヨッパライに
「わぁ、もう半ズボンのひとがいる」
って指さされたけど 湘南の入り口のくせに、の あの駅で

流行のファッションとは言うものの
どんどん短くなっていくショートパンツ
ツイッギーの訪日にびっくりした日本人を
さらに挑発するかのような膝上丈

街を軽く見渡せば
ほら!そこをごらんなさい! ってくらい すぐにツイッギーメンが見つかるはず

どの角度からみても美しいシルエットの短髪
キレイに蓄えられた髭
露わにされた太い足をみせつけるショートパンツ

ステレオタイプのゲイというか モテ筋のゲイというか
誰もがなれるようでなれないというか
だからこそときには強烈なルサンチマンの対象となるようなヒトの
マストアイテム ショートパンツ

季節なんて関係ない
だれよりも早くショートパンツを穿いたもの勝ち

でもちがうの わたしはちがう
ただ暑いだけなの
ほんとうなの ほんとうなの
「わたしも仲間にいれてください!」みたいな
邪な気持ちはないの

でもうれしかったわ

あたしの露わにされた太ももをみて
「かわいいですね」 って職場で言ってくれたのは
2児のパパのアナタだけだから

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時の過ぎゆくままに

友人Mと会った

「あそこの店にごはんいかない?」と言われたので
わたしとユスケさん同伴だったらX日ならOK
わたしだけを濃厚に堪能したかったらこの日でもあの日でもその日だってOKよ
って回答した

友人Mったらそこ特になにも触れずに
X日を指定してきた

ユスケさんとの共有カレンダにー予定いれた
『友人Mがあたしのことイヤラシイ目で見てくるから困る飲み会』って予定いれた
ユスケさんったら特にそこにはなにも触れずに
「はいはいー」って返答してきた

渾身の想いに触れないその芝居を誰に見せたいの
それはないんじゃない?

毎回会ってなにかするとか
相談するとかそうういのじゃなくて
ただダラダラ呑んで話すだけの会

30代のときってダイレクトに自分から悪口とか言ってた
40代になったらほぼ悪口言わなくなった

代わりに「XXさんってさぁ、うん、ね」とか
「あー、○○さん、ほんと素敵なヒトだよね、素敵なヒトなんだけど、うん、ね」とか

わたしから発信はしない
こっちが名前出してやったんだから
あなたからいいなさいよ
いやよあたしが悪者になるじゃない貴女が言いなさいよ
の攻防しながら結果的に悪口言ってるみたいなもんじゃないってなった

とても楽しい宴だったんだけど
数時間の間に酔ったユスケさんが眠り
ユスケさんが起きたら友人Mがうつらうつらし
わたしだけ一人喋ってた
いつもどおり喋ってた
わたしを街角ピエロにさせたのはよくないとおもう

でも帰り際「次あたりに若い子連れてくるわ」って言ってたから
それだけでしばらく生きていけそう

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